最も新しい組織の形「ティール」とは—。

 

最も新しい組織「ティール」。日本でも昨今、急速に認知されてきています。でもその要諦は何?ここでは、「ティール」について、そのあらましを解説いたします。

ティールとは色の名前

まず、この聞きなれない単語、じつは「青緑色(コガモの羽の色)」のことなんです。色の名前がついている理由は、この概念を発表した米国のフレデリック・ラルー氏が、従来(太古~現代)までの組織を色別に解説したことによります。

組織も生き物のように進化する

その昔、人間が作った組織は、暴力や恐怖によって支配されるものでした(これを「赤」の組織と言います)。しかし、これだと組織の形態が安定しません。ここに明確な上下の身分がもたらされて作られた組織が次の段階です(これを「褐色」の組織と言います)。近代に入り、人の意識が変わり、より効率よく生産を行うための科学が発展すると、組織は目的を達成するための大きな機械のようなものになっていきました(これを「オレンジ」の組織と言います)。しかし、社会の変化のスピードが速くなり複雑化が増してくると、それぞれが歯車としてのみ機能する組織では対応が難しくなってきました。そこで登場するのが、同じ文化・価値観を共有してより柔軟に目的を達成しようという組織です(これを「緑」の組織と言います)。このようにして、組織は時代とともに進化してきました。

「緑」との違い

さて、新しいとされてきたグーグル社のような緑の組織。社員は社員といわれず、家族のように扱われます。風通しのよい緑の組織。問題がなさそうに感じられますが、この組織にも弱点があります。それは、決定権を上位者が持っていること。
当たり前に聞こえる「上司が決める」というこの仕組みの弱点とはなんでしょうか。例えば意思決定までのプロセスの長いこと、センターの決定においてローカルの状況が無視される場合があること、提案を取り上げてもらえなかった者が失望することなどです。

このパラダイムを超えたものが、ティール(青緑)の組織。緑の組織にある階層構造が存在しない、という全く新しい形態の組織です。

誰かが作ったものではない

「ティール」の組織という名前はあくまで、新しい組織を研究したフレデリック・ラルー氏が名付けただけのことであって、どこか一か所で始まったものではありません。世界各地に、知らぬ間に、階層構造を持たない新しい形態の組織がいくつも自然発生していることを、多くの組織を調査していたラルー氏が発見したことによって広く認知されるようになってきました。階層がないのに混乱が起きない。働く人、その商品・サービスを買う顧客それぞれの満足度が極めて高い。それはいったいなぜなのか・・・。

従来の組織からそこに至るには、どのようなブレイクスルー(突破口)があるのでしょうか。

決定的に違う三つの要素

これまで確認されたティール組織には、以下の要素のうち少なくとも一つが認められるといいます。

(1)決定権が自分(社員)にある・・・Self-management:これは、仕事の内容ややり方、時間、中には報酬まで自分で決定してよいという形式です。無秩序に陥りそうな極端な仕組みに聞こえるかもしれません。しかし、それを混乱させない優れた仕組みがあります。「助言プロセス」というものです。その決定によって影響を受ける人と、その決定に関して専門知識を持つ人に必ず助言を求めなければいけないーこれが助言プロセスです。必ずしもその助言に従う必要はありません。しかし、このプロセスを経ることによって決定者は組織がより円滑に運営されるかどうかを自分で検証しながら進めることができるようになるのです。

(2)安心して、ありのままの自分でいられる・・・Wholeness:上意下達の組織では、上の意に沿わない(であろう)意見や態度をとらない傾向になりがちです。また、より高い評価を受けるために見栄を張ることや、地位獲得のための政治をおこなったり、他者を出し抜くために自分の持つスキルや情報を開示しない、ということもしばしばです。こうした姿勢は、「階層の中で常に評価を受けている」という構造がもたらします。そのような構造がもし存在しなければ、自分の知っていることを積極的に他者に伝え、知らないことは知らないと素直に言い、つまらない社内政治に明け暮れることなく、心からやりたい自分の仕事に安心して取り組めるでしょう。

(3)「何のための組織か」が最優先される・・・Evolutionary purpose:「顧客第一の信念を貫き××を通じて社会に貢献する」こういう社是・経営理念、よく耳にしますが、日々の経営においては単なる”お題目”。株主利益の達成のためには、各種の数値目標が課せられ、ときとして社是とは真反対の運営になることもあります。そんな現実は、働く人たちからジワジワと、仕事への意欲ややりがいを奪っていくでしょう。ティールの組織では、その社是がお題目にならず、共通の目的として全員に認識され、行動にあたって常に確認されるものとなっていきます。だったら売り上げの目標はどうするんだ?と思われる方もいるでしょう。ティール組織では会社としてのそうした目標は立てないんです。なのに「あるべき姿」に向かっていくから一人一人の馬力が出る。意味ある仕事としての認識が結果として高い売り上げや高い利益につながっていくのです。

そんなうまい話、どこでも通用するわけじゃないだろう。
はい、その通り。経営者がそのやり方を信じる、ということが達成されない限り、実現することはありません。上位者が権限を手放し、階層を無くし、働く人ひとりひとりを信じる。この大きなハードルを越えたとき、最も進化した組織の形、ティールとなるのです。